だいさんのまど(仮)

手書きの日記は字が乱暴で読めなくなりました。じゃあせっかくなので世界の片鱗に刻んでみようかな。書いて読めりゃいいんだ。

ひいじいちゃん

さっき、ひいじいちゃんに会って、一緒にそうめんを食べてきました。

 

そうめんを作ってくれたのはおばあちゃん。

 

 

バイトの時間がずれて、時間ができたから会ってきたんだ。

 

 

 

 

はじめまして。

 

『まあ、ベッピンさんが来たもんだなあ』

 

お会いしたかったです。

 

『こちらこそ』(頭を下げる)

 

 

私たちは、向かい合って座った。アンティークな喫茶店だ。

 

 

『勉強は好きかね』

 

まあ、そうですね、楽しくやってる方だとは思います。

考えることは好きなので、

 

『そうか、でも、考えることはいいことだ。

勉強が楽しいか』

 

はい。

 

『今の子は特に、勉強目当てで大学に行く子は珍しいのではないか』

 

そうかもしれません。みんな働くことをやけに気にしているようには、なんとなく感じます。

 

『そうだろうな』

 

(そうめんと天ぷらが出てくる。喫茶店なのに?)

 

 

 

 

 

 

『君は、本当に幸せだ』

 

そうです、幸せです。

 

『でも、幸せということは、不幸なことだ』

 

うん。

 

『不幸を知らない人は、幸せではない』

 

 

『でも、間違いなく、君は愛されている』

 

 

 

『愛すことは、好きとは違うからな。

 

愛すこと、愛されることに、好き・嫌いは関係ない』

 

 

 

 

 

 

 

『お前さんは、なにになりたいんだ』

 

どうでしょう。私は何になりたいのでしょう。

 

 

 

 

『己を信じればいい』

 

 

 

 

 

私はそうめんをすすっていたが、涙が目ににじんだ。

 

 

 

 

 

涙が止まらなくなってしまった。

 

 

 

 

 

『泣いたら、食事がおいしくなくなるだろう』

 

 

 

 

 

 

でも、嬉しいんです。

 

 

 

 

 

 

きっと、私はひいじいちゃんと同じ人なんだ、

 

そう思うと嬉しかった。

 

 

 

 

 

『よく食べたな』

 

夢中に食べてしまいました。

 

 

(なぜだろう。席を立つ私)

 

 

今日は、会えて嬉しかった。ありがとう。

 

『こちらこそ、ありがとう』

 

また、会いに来るよ。

 

『そうか』

 

 

 

 

 

 

 

思っていたよりも、よく笑う人だった。

 

笑顔が素敵で、

 

高貴で、気高く、和服が似合っていた。

 

 

 

別れ際に、やっぱり私は泣いてしまった。

 

 

 

 

死んだ人を感じるのは、墓の前や仏壇の前とは限らない。

 

 

祖父母によると、ひいじいちゃんは、よく執筆をしていたらしい。

 

役所で働いたり、教えたり、警備員をしていたらしい。

 

詳しいことは知らない。

 

でも、いつも和服で、胡坐をかかない人で、執筆して、ものを手で食べない人だったらしい。